令和5年の衆議院の総予算審査(審査日程と審査時間)
岸井和
2023.03.06
令和5年度総予算の審査日程概要
令和5年度総予算は召集日の2023年1月23日に国会に提出され、各院の本会議での代表質問を経て、1月27日に予算委員会で提案理由説明が行われた(通常は前年の臨時会の参議院本会議で全大臣出席のもとで決算概要報告を行うが、財務大臣の外遊による予算委員会の遅れ、相次ぐ閣僚の辞任のため、遅れて予算審議前の1月24日に行われた。ただし、これ自体は総予算審議への影響はない)。週明けの30日から総予算の基本的質疑に入り、2月28日に委員会採決、本会議で可決され、参議院に送付された。憲法第60条第2項に規定により、これで年度内の総予算の成立が確定した。
委員会審査開始から審査終了までの期間は33日間、総審査日数は19日(地方公聴会、公聴会、分科会を含む)である。昨年はそれぞれ32日間、20日であるので昨年とほぼ同じである。なお、2021年、2022年はコロナの影響で地方公聴会の代わりに参考人質疑を行っていたが、今年からコロナ前と同じ地方公聴会を行うスタイルに戻った。
以前の野党は日程闘争に力を入れ、翌日の日程すらなかなか決まらないことも多かったが、立憲が維新と共闘しているためか、予算委員会の日程は事前に、そして非常に円滑に決まっていった。予算審査の割り当て時間は昨年と同じ80時間、昨年と比べ集中審議が1回減り(5回→4回)、それに伴って総理出席も1回(2時間)減ったが、それに対する野党の抵抗は見られなかった。上記の経過を見ると予算委員会が行われていない日は当初から予定のなかった日である(=財務金融委員会や総務委員会での予算関連法案審査のために空けている)。補正関連法案の審議がなかったこともあるが、全体的に余裕のある日程であった。
昨年までメインであったコロナ関連の質問が減り、児童手当の所得制限撤廃、子育て支援、少子化対策、安全保障問題並びに防衛費増額の根拠や財源確保策、エネルギー問題及び各種インフラ料金の値上げ問題、物価上昇と上がらない所得、旧統一教会問題などの質疑が行われた。2月6日の一般質疑では、LGBT差別発言による総理秘書官更迭を巡って紛糾し、委員長が職権で委員会を開会、野党は抵抗して一時退席したが、与野党の国対委員長会談を経て予算委員会での官房長官からの説明が決まると、その日のうちに正常化され、総予算審議への影響は出なかった。
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総予算の審査時間
衆議院予算委員会の審査時間は83時間42分と、この11年の平均的な時間と言える。昨年と同じ割り当てであるにもかかわらず合計時間が伸びたのは、先に述べた2月6日の野党退席の際に速記が止まっていたためであり(会議の時間には算入される)、ほぼほぼ昨年ベースの審議と言える。
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この表を見るとここ6年はほぼ同じような審査時間となっていることがわかる。審査日数18日程度、審査時間80時間程度、年度内成立が定例化している。予算規模が過去最大を更新し続けても、国会内の会派構成が変わっても、コロナという未曽有の危機に襲われて生活様式が変わっても、総予算審議の前例踏襲は変わらない。相当ドラスティックな変化がない限り今後もこの80時間前後がルーティンとなるのであろう。
また、昨年は総予算に賛成した国民民主党が今年は反対に回った。玉木代表は「賃上げや子育て支援の内容が不十分な上、防衛費増額に伴う政府の増税方針が反対の理由だ」と説明したが、統一地方選を目前に控えて支持団体の意向を無視できなくなったとも言われている。
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