令和4年の衆議院の総予算審査(審査日程と審査時間) 

令和4年の衆議院の総予算審査(審査日程と審査時間)

岸井和
2022.03.07

総予算の審査日程概要

令和4年度総予算は召集日の2022年1月17日に国会に提出され、本会議での代表質問を経て、1月21日に予算委員会で提案理由説明が行われた。週明けの24日から総予算の基本的質疑に入り、2月21日に委員会採決、翌日に本会議で可決され、参議院に送付された。

委員会審査開始から採決までの期間は32日間、総審査日数は20日(参考人質疑、公聴会、分科会を含む)である。昨年はそれぞれ40日間、18日(同)である(補正予算を先行して審議したため所要日数は長い)。

昨年同様にコロナ対策を中心に議論が行われていく中で、国土交通省の統計不正問題、複数の省庁の各目明細書の誤り、国家公安委員長の過去の寄付問題、経済安全保障法制準備室長更迭問題などに野党は矛先を向けたが、委員会審査自体は止まることもなく非常にスムースに行われた。予算委員会がセットできなかったのは自民国対委員長の失言に野党が反発した1日(1月27日)だけである。

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戦後最短の総予算衆議院通過は1999年の平成11年度総予算(小渕内閣)のときであり、2月19日に衆議院を通過している。今回、第2次安倍政権以降の過去9年分の総予算審査日数(平均17.7日)を単純に当てはめれば2月16日前後の衆議院通過となり、最短記録の更新も見込まれる状況であったが、結局は2月22日の本会議で採決された。与党は記録よりも野党のメンツを立てることで円滑な予算審議を選択した。

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総予算の審査時間

衆議院予算委員会の審査時間は82時間50分と、この10年の平均的な時間と言える。

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与党としては総審査時間を増やすこと、予算審査の日数が長くなることには非常に消極的である。この与党の基本方針の枠内で、野党はアピールの場として総理が出席してテレビ中継も入る集中審議を要求する。近年の予算委員会の日程協議は、およそ80時間前後という総審査時間の中でどれだけ総理大臣を出席させるかのせめぎ合いになっていると言っても良い。今年は最後の最後で集中審議を3時間追加することで昨年以上の総理出席が担保され、野党は円滑な採決に協力した。基本線は与野党ともに前例踏襲でしかない。

総予算審査中には予算関連法案の国税、地方税審査のため、予算委員会を半日で終わらせる日も多く、全体的に余裕のある日程であった。本会議でも、総予算が委員会で可決した日に緊急上程せず翌日の議事日程としたが、これは第2次安倍政権以降初のことである(総予算がはじめから議事日程となった直近の例は2011年の民主党政権時代(野田内閣)で、歳入の裏付けとなる国税、地方税を総予算から大幅に遅れて参議院に送付するという異常事態であった)。

また、野党の国民が総予算に賛成した。総予算は政府の政策全体の反映であり、総予算に賛成するということは政府を信任するに等しい。与党寄りの野党小会派が賛成するということはしばしばあるが、政府与党の対立軸として選挙戦を戦った直後の野党が総予算に賛成することは極めて異例である。直近では1994年の平成6年度総予算(羽田内閣)に社会が賛成したことはあるが、これは社会が連立与党に参加していた前政権時(細川内閣)に提出した予算案であったため、今回とは根本的に事情が異なる。今回は、ガソリン税の一時的引き下げについて党の方針が受け入れられたために賛成したとの主張である。野党第三党として埋没せずに存在感を示すための苦肉の戦術であったのであろうが、今後、政府与党に対してどのようなスタンスをとるのか国会後半戦の対応は難しかろう。

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