THE FACTS-衆議院議長(帝国議会編(2))

THE FACTS-衆議院議長(帝国議会編(2))

岸井和
2022.07.15

    議長の在任期間、辞任、就任年齢、出身大学、
     議員となる前の職業、議長退任後の政府役職

3衆議院議長の就任年齢(若年者、年長者)

  • 議長就任時の年齢は押しなべて若い。延べ38人の議長のうち、50歳台が一番多く21人、60歳以上での就任は13人であり、このうち、70歳以上は2人に過ぎない。もともとの平均寿命が現代よりも短かったことに加え、新しい明治新国家を担う人材もおしなべて若かった(総理の年齢も若い)。大正時代まで23人の議長のうち60歳代は2人のみである。
  • こうしたなかで、40歳代で議長に就任したのは上記4人である。堀切議長を除き帝国議会初期の就任である。
  • 中島議長は土佐出身。官僚、裁判官。自由党結成に参加。議長退任後、イタリア公使、貴族院議員。
  • 星議長は江戸出身。官僚、代言人。立憲自由党。議長不信任可決を無視、登院停止処分も無視、除名。
  • 鳩山議長は、父が美作勝山藩士の江戸詰であったため江戸出身。代言人、外務官僚、学者。議長退任後外務次官、東京市会議員。立憲政友会。のちに総理となった鳩山一郎は長男、由紀夫は曾孫。
  • 堀切議長は、福島出身。学者、政友会。議長退任後、政務次官、貴族院議員。

  • 藤沢議長は宮城県出身、弁護士、仙台市会議長、宮城県会議長。立憲民政党所属
  • 元田議長は大分県出身、弁護士。立憲政友会等所属。戦後の船田中議長は娘婿
  • 川原議長は佐賀県出身、佐賀県会議長、新聞社社長。立憲政友会所属
  • 島田議長は島根県出身、東京吏員、弁護士。立憲政友会等所属
  • 濱田議長は三重県出身、弁護士。立憲政友会所属。議長就任時に党籍離脱拒否。議長退任後の反軍部の腹切り問答は有名

 

4衆議院議長の主たる出身大学など

  • 帝国議会時代の議長は江戸時代生まれのものは藩校や私塾に通っており、特に初期は大学を出ていない者も少なくない。その中で、東京帝国大学(その系統にある昌平坂学問所、開成所、大学南校、司法省法学校、旧東京大学も含め)出身者が8人と多い。
  • これに対し、私学系の法律学校出身者も多く、関西法律学校(後の関西大学)1人、明治法律学校(講法学館、茂松法学舎を含む、後の明治大学)3人、日本法律学校(後の日本大学)1人、東京法学院(英吉利法律学校を含む、後の中央大学)3人、東京専門学校(後の早稲田大学)1人、慶應義塾大学1人などの議長を排出している。
  • なお、鳩山はコロンビア大学、イェール大学に、粕谷はミシガン大学に、堀切はハーバード大学、オックスフォード大学、ベルリン大学に留学している。

 

5衆議院議員になる前の主な職業

  • 衆議院議長を経験することになる者が議員となる前の職業は、様々な職を転々とするケースも多いが、総じていえば、①自由民権運動に参加したのち地方議会議員・議長を経験した者、②新聞社社長・社主、③役人から県令・知事を経験している者が多い。それと同時に法学校出身が多いことから代言人・弁護士の資格を持つ者が多い。

 

6衆議院議長退任後の政府役職

  • 近年では、衆議院議長は立法府の長として、その退任後は権力分立の観点、格下の地位になることなどから、議長退任後に大臣等の役職に就くことは少ない。しかし、帝国議会時代は衆議院議員の地位は高くなく、議長の地位も次官クラスであったため、議長退任後も大臣等に就いたことは多く、議長職はキャリアの一過程であった。貴族院に転身するため、あるいは大臣に就くために議長を辞任することもあった。

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