令和3年の国会の総予算審議時間 緊張感なき前例踏襲審議 

令和3年の国会の総予算審議時間
緊張感なき前例踏襲審議

岸井和
2021.03.26

2021年(令和3年)の総予算は1月18日に国会に提出され、22日から衆議院予算委員会の審査が始まり、その後波乱もなく進み、衆議院通過は3月2日と年度内の自然成立は担保され、最終的に参議院で3月26日に成立した。

総予算の審議時間についてみると、近年の傾向をそのまま踏襲するもので、特徴のないものであった。衆議院の審議時間は公聴会、分科会、参考人質疑を除いて、18日間(昨年と同じ日数)、83時間53分(昨年は86時間4)、衆議院の審査開始から参議院での可決・成立までは68日間(昨年と同じ日数)となり、安倍内閣から菅内閣に代っても前年とほぼ同様な数字となっている。

緊急事態宣言下にあることから近年行われている地方公聴会の代わりに、都内近郊の有識者を国会に呼んで参考人質疑が行われたものの、全体として前年の総審議日数・時間を参考にして総予算のスケジュールが進められているのが明らかである。

今年はコロナの関係で集中審議が25時間9分(昨年は19時間30分)、総理の出席時間も51時間58分(昨年は44時間2分)と1日分長くなっているが、ここ数年の平均的レベルの範囲内である(その増加分で一般的質疑が減っている)。定型化しているということは、その時々に抱える問題に応じて審議にメリハリがつけられることがなく、前例踏襲主義に陥っていることを示唆している。

審議の内容を見ると、新型コロナウィルス(緊急事態宣言、特例給付金、雇用調整助成金、Go toキャンペーン、PCR検査、ワクチン、接触確認アプリCOCOAの不具合など)の質疑が圧倒的に多く、さらには、オリンピック・パラリンピックの開催・組織委員長の差別的発言、総務省幹部の違法接待問題が比較的多く取り上げられた。これら以外では、与党議員の不祥事(深夜会食、広島参議院選挙買収事件、前農林水産大臣への違法献金疑惑)、気候変動・脱炭素、北方領土、沖縄問題などが取り上げられたが、内閣の重要政策であるデジタル化への質問は少なく、尖閣諸島をめぐる中国海警法を除くと外交問題については低調であった。新内閣に対する本格的論戦の場としてはコロナという特殊要因があったとはいえ議論の範囲が狭い。

厚生労働省や総務省にとっては苦難の予算審議であったであろうが、予算を所管する財務省としては楽なものであったであろう。審議時間からすれば予定通りに波乱もなく議了している。目安となる過去の審査時間をクリアしたので、野党も文句を言わずに採決に応じているということであろう。野党の追及が毎週木曜日発売の週刊文春頼みであり、また、何十回となく大臣が内容のない同じ答弁を繰り返すことを許してしまっていた。独自の調査能力を高めるとともに質問技術を磨かなければ、緊張感の薄い、政府の思うがままの予算審議になってしまう。

審査時間は衆議院予算委員会議録に掲記されている開議、散会の時間を基に算出。それぞれの議事の時間に政府参考人出頭要求決議や分科会主査報告等の手続き的な議事も含まれている。合計時間には、分科会、公聴会、参考人質疑の時間は含んでいない。正規の予算委員会としての予算委員と政府との間の議論の時間を中心に集計している。
各会派に割り当てられる質疑時間の合計と実績値は乖離があることに注意。予定より早く質疑を終えたり、あるいは長引いたり、中断する時間などがあるためである。実際には割り当て時間の合計より実績値の方が長くなる。
なお、総理の出席時間(提案理由説明時の途中退席)は産経新聞の菅日誌をもとに算出している。

【参照】国会の予算審議

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