国会の予算審議(5)
─ 総予算審議の長期的傾向
岸井和
2019.12.04
Ⅴ 総予算審議の長期的傾向
次に、「総予算の提出から成立までの期間」、「衆議院の審議期間」、「衆議院委員会審査日数」について、グラフに示すと次のようになる。
総審議期間(総予算の「提出~成立期間」)は、その年の状況、つまり政局の変動、失言やスキャンダル、重要な政策問題などの有無により振れ幅が大きく、それは「衆議院における審議期間」とほぼ連動していることがわかる。
第1期の55年体制前期は総審議期間が80日を越えることはない。第2期、55年体制後期から民主党が野党第1党になるまでの時期は成立日の年度越えを見据えつつ総審議期間の日程は調整されていると思われるが、全体として総審議期間は長くなっている。その後、第3期の民主党が野党第1党となってから現在に至るまでは総審議期間は短くなり、80日を越えることはなくなっているのが見て取れる。
他方で、「衆議院の委員会での審査日数」は、全期間を通して20日間を上下しているが、振れ幅はさほど大きくはない。
つまり、「総審議期間」、「衆議院審議期間」が長くなった場合でも「衆議院審査日数」は一定の範囲に収まっていることは、全体の審議日数が長くなることが審議していない日数、空転期間が長くなることを意味している。「審議期間」と「審査日数」は比例していない。「審議期間」が特段に長くなっているケースではかえって「審査日数」が減少していることが多い(特に審査日数の少ない1987年(9日間)、89年(12日間)、96年は分科会を行っていない。)
総審議期間が100日以上となったのは、すべて第2期で、1976年(ロッキード事件)、87年(売上税)、89年(リクルート事件)、90年、94年(政治改革、佐川急便事件)、96年(住専問題)の6回あるが、それに応じて衆議院審査日数が増えているわけではなく、96年を例外としてかえって少ないケースの方が多い。
空転していても、その間、与野党の折衝は非公開の理事会や非公式機関である国対で行われている。妥協や譲歩へとつながるためのコストとも考えられるが、正式な委員会での議論は置き去りにされていることになる。水面下の交渉が多いことは国会審議の不透明性にもつながっている。
(続く)
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