内閣不信任(内閣信任)決議案とは何なのか?④―理論だけではない手段としての内閣不信任(内閣信任)決議案の現実

内閣不信任(内閣信任)決議案とは何なのか?④
―理論だけではない手段としての内閣不信任(内閣信任)決議案の現実

岸井和
2026.07.09

5内閣信任決議案(宮澤内閣、福田内閣、鳩山内閣)

内閣信任決議案は、野党が主導する不信任決議案に対し、与党が主導する議事である。可決された例は1992年の宮澤内閣(No23)と2008年の福田内閣(No36)の2回で、否決された例はない。

宮澤内閣の場合、参議院で継続議案となっていたPKO法案が5日間の徹夜の末、参議院本会議で可決された後、衆議院の審議の中で与党から提出された。PKO法案の成立が近づいている状況下で、社会党が大臣不信任決議案などを連発し審議妨害を続けることを想定し、内閣信任決議案を提出、可決した(社会党提出の内閣不信任決議案は議題とならず未決)。内閣信任決議案が可決されると、内閣全体が信任されたことになるので個別大臣の不信任決議案は提出することができなくなる(内閣不信任決議案が否決された時と同様)。「審議妨害の妨害」という作戦であった。翌日には社会党は所属議員全員の辞職願を提出し本会議にも欠席したままで、公明、民社の賛成も得てPKO法案は可決成立した。

福田内閣の場合は、衆参ねじれの状況下で、参議院で内閣総理大臣問責決議案が可決されたため、内閣の正当性を第一院である衆議院で明確にするためのものであった。ただ、内閣は衆参のねじれに対して苦慮しており、総理問責決議案可決後は参議院が完全にストップしてしまっていたことなどから、福田内閣は次国会の召集日に総辞職した。

また、議決には至らなかったが、1956年に鳩山内閣信任決議案が与党から提出されている。小選挙区制法案に反対する野党からの大臣不信任決議案の連発を懸念した与党が提出した。その後、法案に対する議長調停により与党の内閣信任決議案、野党提出の常任委員長解任決議案ともに撤回され、法案も廃案となった。

 

6参議院の総理問責決議案可決と衆議院の内閣不信任決議案(麻生内閣、野田内閣、安倍内閣)

前述の福田内閣のとおり、ねじれ国会の状況下で参議院での総理問責決議案が可決されると、衆議院での信任があったとしても国会運営は難しくなる。両院の活動は原則としてそれぞれ独立しているので、両者の意思の齟齬を解決する手段は少なくとも制度的には存在しない。政権としては苦慮せざるをえない事態であり、政治的にその場しのぎの手を打ちつつ次の選挙での勝利を目指すしかないが、しばらくの間、混乱と停滞が続くことは避けられない。

2009年の麻生内閣(No37)、2012年の野田内閣(No40)は、参議院における総理問責決議案可決の結果あるいは可決が想定される事態に対して、衆議院で内閣不信任決議案を否決して内閣の正当性を示したが、政権はレームダック化しておりほどなく政権を失った。しかし、自民党が総選挙で大勝したのちの2013年6月26日には参議院で安倍内閣総理大臣問責決議案が可決されたものの、それへの特段の対応はなかった(翌月の参議院選挙での勝利を見込んでいた)。

 

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(参考リンク)

内閣不信任(内閣信任)決議案とは何なのか?① 

内閣不信任(内閣信任)決議案とは何なのか?② 

内閣不信任(内閣信任)決議案とは何なのか?③ 

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