国会の召集と会期(1)

国会の召集と会期(1)
─ 国会の召集、常会・臨時会・特別会

岸井和
2020.05.11

1.国会の召集・会期と国会運営

国会の召集とは、議員に対し一定の期日、一定の場所に集会を命じ、国会の会期を開始させることであり、これによって国会の活動能力が発生することとなる。憲法では、天皇の国事行為として天皇が国会を召集すると規定されているが、それは内閣の助言と承認に基づくものであり、実質的に召集を決定する権限は内閣にある。国会の側からも憲法の規定に基づき臨時国会の召集を要求することができ、要求がなされれば内閣は国会を召集しなければならないことになっているが、この場合でも内閣が国会召集の決定権を持っている。

国会は、憲法上、常会、臨時会、特別会に分けられている。国会の召集は、内閣の決定に基づき詔書の公布によるが、憲法では常会を毎年1回召集すること、国会法では常会を毎年1月中に召集することとされ、一定の制約がある。特別会については総選挙後30日以内に召集されることが憲法に定められている。臨時会については通常選挙後、及び衆議院議員の任期満了後の総選挙に伴う場合を除き召集時期についての定めはなく、内閣の裁量による。

内閣が召集権を有することから、特に臨時会については内閣が必要と考える時期、内閣の都合に合わせて召集されることになる。これは、かつての英国の国王が自分の都合に合わせて議会を召集したのと似ている。会期やその延長については国会で決めはするが、政府提出議案の審議の見込みに応じて内閣と与党が協議をして決めることとなる。つまり、毎年1月の常会の召集は法的な制約はあり、それは1年を通じて国会を召集しないことを認めないことは政府と議会との関係からみても重要なことではあるが、政府が提出する予算の審議は次年度に向けての避けて通れないものであるから、ある意味政府の都合に合わせた召集ともいえる。特別会についても、総選挙後の内閣を決めるうえで避けることはできない。

臨時会の召集は問題となることがしばしばある。選挙後の法定された場合以外、臨時会は内閣が必要とするとき、内閣が提出する案件を国会で審議しなければならないとき、その自由な判断に基づき召集される。このほかに、臨時会の召集の要求が国会側から、実際には野党から提出されることも少なくない。しかし、内閣はこれに必ずしも迅速に対応することはしない。野党は政府の政策上の混乱や不祥事を国会で追及するために臨時会の召集を要求するのが常であるが、内閣は自らの都合の悪い時期に国会を開くことには消極的である。召集の決定権は内閣にあり、なかなか召集されなくても野党は憲法違反だと抗議の声を上げるしかない。憲法で召集することが決められている場合があるにしても、国権の最高機関である国会が内閣の決定をまたなければ活動できないという制度に対し素朴な疑問も生まれる。

内閣によって国会が召集されると、国会がその活動能力を有する期間として会期が定められる。会期外には原則として国会は意思を決定することはできないから、それは国会における与野党の攻防を繰り広げる上で最も基本的な枠組みとなる。会期については、国会法で常会の会期は150日と決められているものの、臨時会、特別会の会期及び常会を含めた会期の延長については国会が決定権を持ち、両議院一致の議決で決定することを原則とする。

会期の設定、とりわけ、会期の延長は、会期の終盤にさしかかってしばしば与野党駆け引きの材料となってきた。政府提出の重要議案の成立が遅れている場合、政府与党は会期を延長してでも何とか成立にこぎつけようとする。一方の野党は会期終了とともに反対する法案を廃案に追い込もうとする。かつては会期延長をめぐり与野党の対立が激化し、牛歩戦術が展開されたり、乱闘騒ぎになったりしたこともあった。1960年5月19日(第34回常会)の衆議院本会議では深夜に警官を使って野党議員を排除して会期延長を議決した(翌日未明に野党議員不在の中で改定日米安保条約を承認)。

会期延長は与党から申し出る場合が多い。野党の言い分は、そもそも当初設定された会期内に法案審議等を終わらせるのが本筋で、政府や与党の都合で土俵を広げること、会期を延ばすことは国会軽視だということであるが、政府のスキャンダルを追及するときには会期を延長すべきだとする。逆に、政府与党は国民生活に必要な議案を成立させる責務があるとして会期延長を求めるが、政府与党が追及される事態になると国会を会期の終了とともに閉会させる方向に動く。たとえば、2019年秋の第200回臨時会では「桜を見る会」を巡る問題の追及のため野党が会期延長を申し入れたものの与党は応じなかった。与野党ともにご都合主義の感は否めないが、結論的には会期延長についても、多数を持ち内閣の意向を反映させた与党の意向がー何らかの犠牲は払うことにはなるがー通ることになる。

近年では、野党は与党提案の会期延長には反対はするものの、それ自体が決定的対立にまでつながることは少なくなってきた。以前は会期延長の報道が出ようものなら、野党は一斉に与党に矛先を向け、与党はそれをはぐらかすというやり取りがしばしばあったが、そのような光景も見られなくなっている。それでも、日本の国会の会期は他国と比べると短いため、法案の成否がかかるような場合、その審議内容よりも時間的な戦略が重視される傾向にあり、スケジュール闘争の原因ともなってしまっている。

日本の国会は、召集の決定にしても、会期の設定にしても、政府・多数党が主導できる制度になっている。諸外国では、1年を通して議会が開かれているケースが多く、議会の召集時期や活動期間について与党・多数党の思惑が反映されにくく、与野党に中立的な制度になっている。

 

2.常会・臨時会・特別会

国会は、その召集される根拠規定や理由により、常会、臨時会、特別会に分類される。いずれの国会もその権能は同じであり、現行憲法下の国会の回次は常会等の区別なく、通し番号で「第〇回国会」と呼ばれている1)衆議院先例集1(平成29年版)、参議院先例録1(平成25年版)。ただし、主たる案件、議事の内容にはそれぞれ異なる傾向がある。

(1)常会

常会は毎年定例的に召集されるものであり(憲法52条)、1月中に召集することを常例とし、その会期は150日と定められている(国会法2条、10条)。また、両院一致の議決により1回に限り会期の延長を行うことができる(同12条2項)。延長の期間については法的制限はない。常会における最大の案件は総予算の審議であり、その後予算関連法案などの審議に入ることとなる。

常会の召集時期は国会法第2条に規定されているが、①制定当初は「毎年12月上旬にこれを召集するのを常例とする」と定められていた。②その後、1955年に「毎年12月中に召集するのを常例とする」と改められ、③さらに、1991年には「毎年1月中に召集するのを常例とする」と改められ現在にいたっている。制定当初の国会法の但書においては「その会期中に議員の任期が満限に達しないようにこれを召集しなければならない」とあったため、1953年1月22日に衆議院議員の任期が満限に達するので、1952年の常会(第14回国会)を8月に召集せざるを得なかった2)宮沢俊義「全訂日本国憲法」日本評論社 2005年。この事態を受けて但書を削除するとともに、召集時期にも余裕を持たせる改正を行った(②)。さらに、常会では総予算の審議が最大の課題であり、財政法には「内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の12月中に、国会に提出するのを常例とする」とあったものの、実際には1月になってから提出されていた。国会としては1か月ほど時間を浪費してしまうので、1月召集に改めることとなった(財政法も改正した)。常会が1月召集となったのは1992年の第123回国会以降である(③)。

なお、後述の特別会の項でも言及するが、1969年、1972年、1983年は解散の関係で常会は召集されていない(いずれも12月召集の時代)。常会の召集詔書が公布されたのち、常会召集前の臨時会中に衆議院が解散されている。内閣は、常会が開かれなかったとしても、召集詔書が公布され召集行為があったことから憲法の規定には反しないとしている。

 

(2)臨時会

臨時会は、内閣の判断に基づいて臨時の必要に応じて召集されるもの、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば」召集されるもの(憲法53条)、また、衆議院議員の総選挙の任期満了による総選挙が行われ、その任期が始まる日から30日以内に召集されるもの、参議院議員の通常選挙が行われ、その任期が始まる日から30日以内に召集されるものがある(国会法2条の3)。国会召集後の早い時期に、両院一致の議決により会期が定められ、その延長は2回まで行える(同11条、12条)。

臨時会は、内閣の議案提出の状況に応じて、秋に召集されることが多い。また、通常選挙後の参議院の院の構成(正副議長の選挙、委員長の選挙、特別委員会の設置など)を行うために召集される臨時会については、選挙後の夏季に召集されることが多い。衆議院議員の任期満了に伴う総選挙は戦後1度のみであり(1976年125日)、それを受けての臨時会は12月24日から5日間開かれた。

さらに、各議院から臨時会の要求がなされることも少なくない。この場合、与党から要求されることはなく、野党の要求によるものである。これまでの例を見れば、野党の要求に応じて迅速に国会が召集されてきたとは限らない。

 

(3)特別会

憲法54条において、衆議院解散に伴う総選挙が行われ、「その選挙日から30日以内に、国会を召集しなければならない」とされ、さらに国会法1条3項で「…特別会(憲法54条により召集された国会をいう)…」とされている。特別会の会期も両院一致の議決で決定され、また、会期の延長は2回までできることとなっている(国会法11条、12条)。

特別会の召集時期と常会の召集時期が重なるとき、たとえば、年末に総選挙が行われた場合などは、特別会と常会と併せてこれを召集することができる(国会法2条の23)1955年改正で本条が追加された際、当初衆議院案では「臨時会または特別会」としていたが、参議院側から「政府の臨時会の決定が遅れると臨時会がなくなって常会と一緒になってしまい、憲法上臨時会の召集権を持っている議院側として困る」旨の意見があり、特別会のみ常会と併せて召集できることとなった。(1955年1月21日衆議院議院運営委員会議録) )」とされている。しかし、この規定が使われたことはない。召集詔書の公布時期(常会は10日前、特別会は規定がない)、会期(常会は150日、特別会は両院一致の議決で決定)、会期の延長の回数(常会は1回、特別会は2回)が異なっており、常会と特別会のどちらの規定を用いるのかが法律上定まっていない4)今野彧男「国会運営の法理」国会の法規・慣例において検討を要する問題点 2010年 信山社 参照。先例もないことから与野党での協議のうえで決めることとなろうが、解釈を巡って国会の召集前から対立する可能性が出てくる。

第62回臨時会の1969年12月2日に衆議院が解散されたときには12月中の常会召集が不可能となったため(1227日総選挙)、翌年1月に特別会(第63回国会)として召集され、会期は120日と議決された。混乱を回避するために併せ召集の規定を使わなかった。同様な例で、総選挙後の1972年12月と1983年12月には特別会(それぞれ第71回国会、第101回国会)として召集され、会期は150日と議決された。併せ召集ではないが、より常会的色彩を反映した扱いをしている。

明治憲法時代は常会と特別会を併せて召集したこともあり(1898年11月召集の第13回帝国議会)、特別通常議会と呼ばれたが、常会の例に倣って会期は3か月であった。

特別会では、衆議院の院の構成及び衆議院議員総選挙の結果を受けて内閣総理大臣の指名を行うことが最大の案件である。

 

以上をまとめると次の表のとおりとなる。

脚注

脚注
本文へ1 衆議院先例集1(平成29年版)、参議院先例録1(平成25年版
本文へ2 宮沢俊義「全訂日本国憲法」日本評論社 2005年
本文へ3 1955年改正で本条が追加された際、当初衆議院案では「臨時会または特別会」としていたが、参議院側から「政府の臨時会の決定が遅れると臨時会がなくなって常会と一緒になってしまい、憲法上臨時会の召集権を持っている議院側として困る」旨の意見があり、特別会のみ常会と併せて召集できることとなった。(1955年1月21日衆議院議院運営委員会議録)
本文へ4 今野彧男「国会運営の法理」国会の法規・慣例において検討を要する問題点 2010年 信山社 参照

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